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2012年03月21日(水)更新

不完全な「美」

トルソー(トルソ)というのは彫刻用語(イタリア語)で、「胴体」を表します。
 
美術館に行くと、腕や足、首が無い胴体だけの彫刻がたまにありますが、あれをトルソー(トルソ)というのです。
 
つまり、手足などの四肢や、首から上をすべて欠いている作品、それがトルソー(トルソ)。
 
でも有名なトルソー(トルソ)は、元々わざと初めから省いて制作しようなどという、そういった意図で制作されていないものがほとんどです。
 
代表的な作品としてはルーブルの『サモトラケのニケ』や『ミロのヴィーナス』などがそうです。
 
『サモトラケのニケ』は、最初からあの形であったわけでは当然ありません。




 
最初は胴体のみ見つかり、そして羽なども周辺から採掘され、徐々にパーツが集まってやっとあの形に。
 
首から上や腕部分はまだ発見されていませんが、完成当初は完全な形の彫刻像であったことは明白です。
 
この壮大な像にどんな美しい女神の顔が付いていたか・・・。

また剣などはやはり持っていたのか・・・など。
 
ギリシャ文明の代表格な彫刻として君臨し、この像のレプリカは、実は日本でも数多くの美術館や施設で展示されているので、探してみてください。

 
『ミロのヴィーナス』はもっと有名かもしれません。



こちらは肩や 腕から下が無く、このくびれた姿勢から、実際はどんな腕や手をしていて、何かを持っていたんじゃないかなど、どのようなポーズだったかは、いまだに議論の的です。
 
 
ではもし、これら両方の像が完全な形で見つかっていたら。
復元されていたら。
 

現代におけるこの二つの像の扱いはだいぶ変わっていた事でしょうね。

ここまで注目を浴びなかった可能性は大です。
 
不完全だからこそ興味対象として価値があり、証拠が見つからない限り絶対に答えが出ないので、ますます魅了される。

人間はそういうものに惹きつけられるものですから。
 
不完全だからこその「美」、それがトルソー(トルソ)なのでしょう。
 

現代では、あえてその不完全な美を演出するために腕や首、脚を最初から造らず、または途中でわざと切り取り除く人体彫刻の像を見かけます。
 
公募展や個展に出品される作家さんも当然居られます。
 
あくまでも個人的な意見として、ちょっと疑問符なのです。
 
なんだか宿題を出されているか、もしくは誤魔化されているようで・・・。
 
しかし、まあ、それでも美しく感じるものも中にはあり、わざと造られるトルソーも「あり」なのかなぁ、
と思う今日この頃です。


ちなみに、ファッション展示用の腕や足が無いマネキンにもトルソーっていう言葉は使われています。




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